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2016年9月10日 (土)

『江戸へおかえりなさいませ』

 待ってました、杉浦日向子さん! 11年前、癌のため46歳で亡くなった彼女の単行本未収録のエッセイやイラストを集めた本が、5月に河出書房新社から出版された。前書きや後書きは当然ないのだが、編集者の断り書きも、作者プロフィールに没年の記載もなく、「余計な詮索抜きで読んで」とメッセージが聞こえる。

 どの文章も江戸への愛がしみじみ感じられ、例えば、「〝本物〟を味わう極上の愉しみ」で、蕎麦通の日向子さんは、浮世絵を見る事と、浮世絵の写真製版を見る事では、「かんだ藪の天ぷらそば」と「マルちゃんの緑のたぬき」ほどの違いがあるという。「実際の浮世絵に鼻先を近付けなければ、和紙の毛羽立ちや、刷りのでこぼこのあわいから溢れ出す、饒舌なささやきに浴する愉しみは味わえない」と書き、「浮世絵を飛び切りウマク見せてくれる所」として、原宿の太田記念美術館を薦める。もう、すぐにでも行ってみたくなってしまう。0910

 表紙は江戸を俯瞰したようなペン画。木立や家並みがあり、川が流れた先に帆かけ舟が連なり、遥かに富士を眺める。上空に薄紅の桜吹雪があしらわれ、橋の通行人から吹き出しが出て、「ナント、生きた甲斐がするじゃアないか」。声の主は今も江戸に生きている日向子さんだ。

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