BOOKS

2017年11月 5日 (日)

日曜夜の『陸王』

 10月からの新番組で一番おもしろいドラマは日曜夜9時の「陸王」だ。池井戸潤の原作を読んだ時、どれほど感動しただろう。それを今回、テレビで原作に忠実に、いや忠実以上の映像化で描いてくれているのだ、楽しみでたまらない。
 足袋製造の「こはぜ屋」が人間本来の走り方ができる素足感覚のランニングシューズの開発に挑む。アイディアも技術も持っている、情熱も志もある、チームワークもピカイチである。しかしお金がない、お金だけがない。銀行は実績がないの一点張りで融資できぬと突っぱねる。主人公たちが何度も挫折しながら立ち上がる過程や、ラストの胸のすく結末を知っていながら、毎回ハラハラし、ほろりとさせられる。

1105 小説を読みながら、自分なりにシーンを想像していたつもりだが、新商品「陸王」がランナーの足元であれほど美しいものだとは、ドラマ化されて初めて気が付いた。ランナー役の俳優・竹内涼真クンのおかげと思うけれど。

2017年10月 8日 (日)

プレゼントされた本

 30年前も今回も、アイオワでお世話になったRさんが、「日本からあなたたちが訪れている間、政局の話には敢えて触れなかった。実際は国際情勢にしろ、国のリーダーにしろ、心の痛むことばかりだけれど…」と言って、別れ際に一冊の本をくださった。明るい花柄の包み紙から現われたのは、『We Are the Change We Seek』-バラク・オバマ氏の演説集-。中身をすらすら読むことはできないけれど、表紙と厚みを見るだけでも、苦難を乗り越えてきた歴史、この国の良心、志に思いを致し、それらを忘れまいと思う。
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 日本を離れていた1週間ちょっとの間に政党が消えたり生まれたり、複雑な情報にようやく頭が追い付いたところである。明後日は総選挙の公示日。「他の誰かや別の機会を待つならば、変化は訪れない。我々こそが、我々が求める変化なのだ」…本のタイトルを含む一節を、そして彼の地からこの本が贈られたことを忘れまい。

2017年7月 1日 (土)

戦時下の教育と現代と

 練馬区光が丘図書館で吉村文成氏の講演会があった。大津の国民学校の生徒が描いた絵日誌をもとにした吉村文成著『戦争の時代の子どもたち』をテーマに、図書館利用者の会が主催したもの(6月3日のこの欄でも紹介)。
 カフェ・チャイハナのマスター吉村さん(元朝日新聞記者、龍谷大学国際文化学部教授)にはカフェでよくお目にかかるが、講演をうかがったのは初めてだった。
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 スクリーンで、明るくのびのびした絵日記を8つの技法(対比と描き分け、吹き出し、省略と強調など)ごとに紹介し、その〝自由さ〟が、子守や手伝いで忙しいから手抜きを工夫してのことだったという分析が面白い。そして矢嶋正信校長の「土に親しむ教育」、西川綾子教諭の「この子たちに文化を与えたい、そういう文化がないなら自分たちで文化をつくっていくしかない、そう思って絵日記を描くことを思いつきました」があってこその作品だったという講演内容に、なるほどと感じ入った。
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 さらに講演のエピローグが印象深かった。…教育とは国の未来をつくっていくこと。明治維新(開国)から国民国家の形成のために天皇制教育(忠孝の教育)が行われ、73年後太平洋戦争に突入。敗戦後は民主主義を実践する国民をめざして民主主義教育(平等、公平)が行われ、72年経った。そして今世の中は大変化、私たちはどこにいるのだろう。多数決を重視し、大勢の支持があるからいいじゃないかという。そのもとに〝考える〟個人があるか。臆病なほどに〝考えていく〟ことが大切。矢嶋校長の記した「一人の人間にとって信実なるもの、それは考えることである」が、今あらたに光る。

2017年6月 3日 (土)

図書館の新しい風

 月に1度の「図書館利用者の会」の例会。今日は総会で、会計報告、企画事業についてなど、トータルに検討した。…といっても、堅苦しい会議ではなく、図書館でこんなことができたらいいなぁ、というプランの話し合いである。サイエンス・カフェ、ブックトーク、英語のおはなし会、読み終わった本の交換会等々、おもしろそうな企画が続々! 本を借りにくるだけではもったいない、図書館の活用術もアピールしたいと思ったことだった。

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次のイベントは、
講演会「戦争の時代の子どもたち―瀬田国民学校五年智組の学級日誌より―」
1944年4月~45年3月に大津市の国民学校の女子生徒らが描いた絵日誌をもとにして、2冊の本(『戦争の時代の子どもたち』『少女たちの学級日誌』)ができた。なぜ? どのようにして? 2冊の著者・解説者が講師となって70年前の子どもたちの日常を振り返ります。
日時:2017年7月1日(土)14時~16時
場所:光が丘図書館 2階視聴覚室
講師:吉村文成氏(元朝日新聞記者・龍谷大学国際文化学部教授)
会費:500円
お問合せ:利用者の会 riyosha.hikarilib@gmail.com  

利用者の会の会員も、随時募集しています。どなたでも入会できます。

2017年4月28日 (金)

『蜜蜂と遠雷』

 恩田陸の話題作『蜜蜂と遠雷』(幻冬舎)を読んだ。舞台は国際ピアノコンクール、第一次予選で90余人が24人に、二次で12人に、三次で6人に減らされ、そしてその6人が本選に挑む数日間の物語。目次もそのように章立てされていたので、私も一日にコンクールの一日分(約100頁)ずつ、読み進めた。それだけでも贅沢な臨場感を伴う読書だったが、書物を読むというより、活字から音楽が聞こえてくるようで、言葉でこんなことも表せるんだ、計り知れない力を持っているんだ…と思わされて、感動した。

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 中でも私が好きなのは、第二次予選で、書き下ろしの新曲「春と修羅」をコンテスタントたちが自分の解釈で弾く場面。高島明石は「あめゆじゅとてちてけんじゃ」(宮澤賢治の「永訣の朝」より死にゆく妹の言葉)をモチーフにする。マサルは宇宙の静寂と広がりを、風間塵は自然の猛威と驚異を、栄伝亜夜は塵に応えるかのように命を育くむ大地の安堵を奏でる。ピアニストの感性、イメージする力、世界観…そしてそれを著す作者の筆力に、ぞくぞくせずにはいられなかった。心地よい読書体験だった。

2017年4月 9日 (日)

『よい句をつくるための川柳文法力』

 川柳の大会や投句の締め切りが迫ってきて、少しの時間を見つけては、五・七・五と指を折って句を絞り出している。そこですがり付くのが『よい句をつくるための川柳文法力』(新葉館出版)の本。先月末に開かれた川柳同好会「やまびこ」の勉強会に、筆者・江畑哲男氏がゲスト講師としてお越しくださって、「文法は難しいと敬遠されがちですが、知らないのはもったいない。これを身に付けると表現力がぐんとアップします」とにこやかに話された。
 「ことに女子力ならぬ〝助詞力〟をつけてください(笑)。気持ち、含蓄、深さなど、てにをはの一字を変えるとニュアンスが違ってきます」とのこと。比喩、擬人法などについても、著書には例句を数多く引いて説明、比較がなされ、なんとなく思っていたことが、なるほどと腑に落ちる。さすが高校の国語の先生である。
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 ふむふむ…と読み、秀句もたくさん鑑賞することができた。…が、肝心の作句はなかなか進まない。しばらくもがき苦しむ日が続きそう。

2017年3月21日 (火)

「中東のいま」

 川上泰徳著『「イスラム国」はテロの元凶ではない』(集英社新書)を図書館から借りた。私が半年ほど前に入会した「光が丘図書館利用者の会」が、来月著者の講演会を開くので、にわか勉強に取りかかったのである。
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●緊急連続講座「中東のいま」
日時:第1回 4月1日(土)14:00~16:00「中東で何が起こっているのか」
    第2回 4月8日(土)14:00~16:00「イスラムとは何か」
会場:光が丘図書館 2階視聴覚室
会費:500円/回
お申し込み、お問い合わせは、利用者の会riyosha.hikarilib@gmail.com(電090‐1656‐2404)へ。どうぞお出かけください!

 川上泰徳氏は一年の半分を中東で過ごすジャーナリスト(元朝日新聞記者・編集委員)。講座はいずれも日本との関わりを主にした内容で、二回はもちろんどちらか一回だけでも、リアルな話が聞けること請け合いである。
 好みの小説をウキウキと読むのとはワケが違い、上記の新書はなかなかスラスラとは読めない。だからこそ講演のかたちで話をうかがうのがとても楽しみで、練馬区にお住まいと聞いて勝手に親近感を抱いている。

2017年1月20日 (金)

『家康、江戸を建てる』

 図書館に予約しておいた本を手にした。門井慶喜著『家康、江戸を建てる』(祥伝社)。半年以上経って、ようやく順番が回ってきたのである。本は読みたいと思ったときにすぐに手に入れるのもいいが、ちょっと忘れていた頃に不意に向こうからやってくるという出会いもなかなか楽しい。
 1590年、秀吉から関八州への国替えを打診された家康が、家臣らが「断固拒否すべし」と猛反対する中、「関東には未来(のぞみ)がある」と、江戸の街づくりを決断する。第一話から五話まで、「流れを変える」「金貨を延べる」「飲み水を引く」「石垣を積む」「天守を起こす」と、目次のタイトルを見るだけでも胸が躍る。著者は、本名が徳川最後の将軍と同じ慶喜なのだとか。書かれるべくして書かれた内容と期待できそう♪
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ブログを始めて1年半、今日は200本めの記事だった。

2016年11月22日 (火)

『眩』と北斎美術館

 朝井まかて著『眩(くらら)』(新潮社)を読んでいる。葛飾北斎の娘お栄を主人公に、父の膝で初めて絵筆を握らせてもらって〝眩々(くらくら)した〟幼時から物語は始まる。親子で絵に没頭し、そりの合わない母、疫病神のような甥、心の支えとなる絵師仲間などとの人間模様を絡めながら、「挑む方が面白いじゃないか」と気丈なお栄の、描くことにクラクラと魅せられながら打ち込む姿がかっこいい。本の表紙になっている「吉原格子先之図」を仕上げ、60歳を前に新たな出立をするところで物語は終わる。11223
 浮世絵師・北斎は「卍」の号を持つ川柳人でもあったこと、昨年私が見たアニメ映画『百日紅』(杉浦日向子作)も北斎とお栄を取り巻く話だったことから、とても親近感をもって読み始めた…ところへ、もう一つ巡り合わせが重なった。本日、墨田区に「すみだ北斎美術館」がオープンしたのである。北斎は墨田区に生まれ、93回転居しながら生涯のほとんどをその地域で過ごしたとか。斬新なデザインの建物に北斎一門の作品約1800点を所蔵。誇らしい江戸文化に会える場所として、人気を集めるに違いない。

11222_2  11月19日の朝刊記事に、展示物の一つである北斎とお栄の再現模型の写真があった。『眩』を読んで、まさに想像していた通りの光景だった。

2016年11月 5日 (土)

図書館で朗読会

 光が丘図書館で「わたしの好きな星野道夫」と題して朗読会が行われ、主催した「図書館利用者の会」の一員として、私も朗読することになった。選んだのは、『旅をする木』(文春文庫)から「もうひとつの時間」。都会でせわしく暮らす同じ瞬間、北海道のヒグマが倒木を乗り越え、アラスカの海でクジラが飛び上がっているかもしれない。そういった〝もうひとつの時間〟が確実に流れていることを意識できるかどうか、その差は実に大きいというメッセージである。そのほか手紙形式のエッセイや池澤夏樹の解説など、示唆に富む文章が詰まった一冊だ。11052
 数人が朗読した後、輪になってトークのひととき。アラスカに行ったことのある方、国語の先生だった方、ブックトークを手掛けた方…等々、それぞれが星野氏への想いを語った。星・野・道・夫という名前自体が彼の人生を示しているようで、これがペンネームでなく本名なのも、気づいてみれば不思議である。11051_2
 紅葉の季節になり、今日の着物はこの組み合わせ。並木の銀杏が一部この帯の色になっていた。11053